「家が一番の資産」になる時代? インフレ時代の“住まい”の資産価値の考え方

1. なぜ今、インフレが家の価値を押し上げるのか
近年、日本でも物価上昇=インフレ傾向が顕著になっています。食品や日用品だけでなく、住宅の建設に必要な資材(木材、鉄鋼、コンクリートなど)や人件費も高騰。これにより新築住宅の供給価格は年々上昇しています。
一方、住宅は「モノ」であるため、インフレが進むと将来的に“値下がりしにくい資産”として注目される傾向があります。実際、2020年以降、首都圏の新築戸建てや分譲マンションの価格は急上昇。土地付き住宅の価値もエリアによっては10~20%前後上がっているケースも見られます。
【図解】インフレが住宅価格に与える影響のイメージ

さらに、低金利時代が続いたことによる住宅購入の後押しも重なり、「今買っておかないと将来的にもっと高くなるのでは?」という心理的要因も住宅需要を押し上げています。
とはいえ、価格が上がる=資産価値になるとは限らない点も要注意。次章では、家を“消費”ではなく“資産”としてどう考えるべきかを見ていきましょう。
2. 家を“消費”ではなく“資産”として考える時代へ

かつての日本では「家=消耗品」という見方が根強くありました。とくにバブル崩壊後は「家は買った瞬間に価値が下がる」とも言われ、賃貸派が増えた時期もあります。しかし近年、この見方に変化が生じています。
インフレによる物価上昇、建築資材の高騰、労働コストの上昇などが新築価格を押し上げており、**「住宅の取得価格=下がる前提」という常識が揺らいでいます。加えて、都心や人気エリアの住宅は中古でも高値で取引される傾向があり、「適切な立地と品質の住宅は、資産価値が維持されやすい」**という認識が広がっています。
このような背景から、住宅を単なる「居住空間」としてではなく、「将来の備え」や「資産ポートフォリオの一部」として考える家庭が増えています。特に子育て世代や若年層にとっては、「住宅ローン=負債」ではなく、「将来にわたる安定的な資産運用」として捉えることが重要です。
かつての常識:「家は負債・減価するもの」
高度経済成長期に建てられた住宅の多くは、30年もすれば価値がゼロになるとされてきました。築年数が古くなると資産価値が急速に下がり、売却しても土地価格だけが評価対象になる——これが従来の住宅観です。
また、税制面でも減価償却の考え方が強く、「住宅は資産ではなく消耗品」という考えが根強く存在していました。
今の常識:「良質な家は価値を保つ」
| 背景 | 内容 |
| 資材費の高騰 | いわゆる“ウッドショック”や物流費上昇により、新築価格が高騰し、中古住宅の相対価値が上昇。 |
| 人口の都市集中 | 地価が安定、または上昇するエリアでは、中古でも住宅価値が下がりにくい。 |
| 省エネ・高性能住宅の普及 | ZEHや長期優良住宅など、性能が高い物件は再評価されやすい。 |
特に「立地+性能+メンテナンス」がしっかりした戸建ては、購入後も資産価値を維持しやすいという認識が広がってきました。
賃貸 vs 持ち家、将来的な「純資産」の違い
例えば30年間賃貸で家賃を払い続けた場合、手元には何も残りません。しかし、住宅ローンを返済し終えた後の持ち家は、土地+建物分の“資産”として残り、老後の住居リスクを大きく軽減します。
3. 資産価値が落ちにくい家とは?
インフレや不動産価格の上昇が続く今、「どんな家を買うか」で将来の資産価値が大きく左右される時代に突入しています。ただし、すべての住宅が必ずしも価値を保つわけではありません。では、資産価値が落ちにくい家にはどのような特徴があるのか? ここではその条件を具体的に解説します。
資産価値が落ちにくい家の3つの共通点
| ポイント | 解説 |
| ① 立地の良さ | 都市近郊・駅徒歩圏内・生活利便性の高いエリアは下落リスクが低い |
| ② 建物性能の高さ | ZEH、長期優良住宅、耐震等級3など、基準クリアの高性能住宅は再評価されやすい |
| ③ 管理・メンテナンス履歴 | 定期点検や外壁塗装などの記録が残っている家は買い手に安心感を与える |
【図解】価値が落ちにくい住宅 vs 一般的な住宅

長期的に価値が残る「ストック型住宅」へ
日本ではかつて「スクラップ&ビルド」型で住宅が使い捨てられてきましたが、近年ではストック型住宅政策が進められています。国が推進する「長期優良住宅」や「住宅性能表示制度」の導入によって、性能の高い住宅は資産として長く評価されるようになってきました。

長期優良住宅のメリット
- 固定資産税の減税(5年間)
フラット35S(金利優遇タイプ)
中古市場での流通価格が安定しやすい
中古市場の評価も大きなカギ
将来的に売却や貸し出しを視野に入れるなら、住宅を評価するのは“買主側”の視点になります。そのためにも、「見た目」だけでなく、断熱・耐震・劣化対策などの見えない性能を重視する家づくりが重要です。
💡 ワンポイント
売却時に「インスペクション(住宅診断)」を行っている住宅は、買い手の信頼度が上がり、資産価値が維持されやすい傾向にあります。
「資産価値を守る」視点で家を選ぼう
どんなに高級な住宅でも、立地や性能、メンテナンスが整っていなければ価値は下がります。逆に、質の高い住宅を“きちんと手入れして住む”ことで、家は確実に資産になります。
将来のリセールバリューや家族のライフプランも踏まえ、資産としての住宅選びを意識することがこれからは重要です。
4. インフレ時代の住宅購入で“損しない”ための注意点
インフレ下では「現金の価値」が相対的に下がる一方、「実物資産」である住宅の価値は上がりやすくなります。しかし、焦って購入するとかえって損をしてしまうリスクも。ここでは、インフレ時代における住宅購入で後悔しないための3つの注意点を紹介します。
注意点1:金利の動向に注意!
インフレが進むと、住宅ローンの金利が上昇する可能性があります。
金利が1%上がると、35年ローンでは月々の返済額が1〜2万円増えることもあります。
変動金利を選ぶ場合は、将来の上昇リスクを想定して**「金利が上がっても返済できるか」**を確認しておくことが大切です。
不安がある場合は、長期固定型ローンを選ぶことで支出を安定させることも検討しましょう。
金利は住宅の「実質価格」に直結します。借入時だけでなく、将来の金利変動も見据えて計画を立てることがポイントです。
注意点2:立地条件に注意!
単に「安いから」という理由で郊外や不便なエリアを選んでしまうと、将来的に資産価値が落ちやすくなります。
特に以下のような要素が揃っているエリアは、資産性が維持されやすい傾向にあります。
- 駅・バス停まで徒歩10分以内
- 学校・スーパー・病院など生活インフラが整っている
- 人口が減少しにくいエリア(再開発や都市近郊)
注意点3:リセールバリューを意識した住宅選び
今後転勤や家族構成の変化で住み替えが必要になる可能性もあります。売却しやすい物件かという視点も重要です。
以下のようなポイントをチェックしましょう。
| チェック項目 | おすすめの条件 |
| 建物の状態 | 築浅・長期優良住宅認定など |
| 間取り・広さ | 汎用性の高い3LDK前後 |
| 周辺の売買履歴・傾向 | 同じエリアの取引価格が安定しているか |
| 建築会社・施工品質 | 実績ある大手メーカーかどうか |
5. まとめ:これからの「住まい」は“住むため”+“守るため”の資産
住まいは「消費」から「資産」へ
これまでの日本では、住宅は「老朽化して価値が下がるもの」として、購入後は資産価値よりも「住み心地」や「立地の便利さ」が重視されがちでした。しかし、インフレによって物価が上昇し続ける現代では、「住まい」自体が資産を守る手段として再評価されています。
家賃を払い続けるマンション生活と、ローン完済後に土地ごと所有できる戸建て住宅とでは、長期的な資産形成に大きな差が出る可能性があります。
持ち家は“生活コストの固定化”と“資産の保全”を両立
特にインフレ時代において、住宅ローン金利が固定である場合、将来の支出が読みやすくなります。家賃が年々上昇するリスクを避け、生活コストを固定できる点もファミリー層にとって安心材料となります。
さらに、資産価値の落ちにくい家を選べば、将来の売却時にもリセールバリュー(売却価値)が期待でき、住みながら資産を守ることも可能になります。
「家は最大の消費」から「家は最大の投資」へ
今後は「いかに良い立地で、資産価値の落ちにくい家を選ぶか」がポイントです。戸建て住宅は、土地という物理的資産と密接に関わるため、長期的には“守る資産”としての側面もあります。
「住むため」だけでなく「守るため」にもなる家選びをすることで、将来のライフスタイルの幅を広げることができます。









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